あの夏の続きを、今
松本先輩まであと数歩、という所で大きく深呼吸をしてから、私は先輩のもとに駆け寄る。
「あっ……あの……松本先輩……お久しぶりです!」
緊張で動かなくなってしまいそうな口から、やっとのことで言葉を出す。
「広野さん……来てくれたんだ!ありがとう!」
そう言って松本先輩は優しく微笑んだ。
あの頃と変わらない、眼鏡の奥に見えるあの優しい笑顔と頬に浮かぶえくぼに、胸がキュンとする。
先輩のこの笑顔が、何よりも大好きです────
「そういえば、今年1年生は何人入ったの?」と松本先輩が言う。
私は首を少し持ち上げ上を向いて、松本先輩の顔を見て答える。
相変わらず、松本先輩は背が高く、私は背が低いから、意識して視線を上げないと目を合わせることができない。
「えーと、全体で21人…トランペットは3人です」
「えー!?そんなに!?すごいなー!半分が1年生じゃん!!
そういえば、中学の顧問、変わったらしいね。めっちゃ強い所から来たって聞いてるけど、その影響かな?」
「その影響は大きいと思いますね」
「そっか、なんだか色々と大変そうだね、…でも、なんだか楽しそうじゃない?」
「はい!練習は厳しいですけど、自分たちが上手くなっていってるのが実感できて、とっても楽しいです!」
私は松本先輩の全身をじっくり見てみた。
エンブレム付きの紺色のブレザーに青系のストライプのネクタイという制服は、松本先輩にとても良く似合っている。
中学の学ラン姿の松本先輩もかっこよかったけれど、高校のブレザー姿の先輩は大人っぽく見えて、さらにかっこいい。