あの夏の続きを、今


その後もずっと、私と松本先輩は言葉を交わし続けた。


卒業してしまった松本先輩と、今こうして再び言葉を交わすことができている────夢みたいな時間だ。


私は思っていることがすぐ顔に出てしまうタイプ、とよく言われるけれど、「松本先輩のことが好きです」って、顔に出ていないだろうか。大丈夫だろうか。


「嬉しい」とか「悲しい」とか、そんな感情が表情に現れるのはだいたい想像がつくけど、「好き」っていう気持ちって、どんな風に顔に出るんだろう。


分からないけれど、でも、それが表情としてでてしまわないように、極力、気持ちを抑えながら話すようにしなければ────


そんなことを考えつつ話していた。


そうこうしているうちに────


ヴーーーーーッ………


第2部開始5分前のブザーが鳴った。


「えっ、もう、こんな時間…早い……それじゃ、松本先輩、また、後で……」


私が席に戻ろうとすると────


「コンクール、頑張ってな!」


松本先輩にそう言われて、胸が、どくん、と鳴った。


「はい!頑張ります!」


私は自分にできる最大の笑顔で答えてから、走り出したくなるほどの嬉しさを心の中にしまって、席に戻った。
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