あの夏の続きを、今


1人目の希望者の人が、トランペットを吹く。



プぅーーーーーーーーっ。



その人は1発目でかなり安定した音を出した。



初めてなのに、あんなにいい音を出せるなんて……



どうしよう、私、落ちるかもしれない────


「それじゃ、次」


先輩がもう1人の方にトランペットを渡す。


その人は2回目ぐらいで音が出た。


さっきの人とは違う、不安定で少し高い音。


どうしよう。次は、私の番だ。


2人とも、ちゃんと音が出てる。


私だけ音が出なかったら、どうしよう────


「それじゃ、最後の人」


先輩がやって来て、私にトランペットを渡す。


「えっと、確か体験来てたから…吹き方とか持ち方とか、わかる?」

「はい、わかります」

「それじゃ、吹いてみて」


そう言われて、震える手でトランペットを持ち、マウスピースを口に当てる。


大きく息を吸って、一気に吹き込む。



プァーーーーーーーっ。



やった!出た!!



けれど、音が安定しない。ふわふわと、浮ついたような音程だ。


1人目のような安定した音を出したくて、もう一度吹いてみるけれど、やはり安定した音は出なかった。


「全員音は出るみたいだけど……前田さん、どう思う?」


先生が言うと、「前田さん」と呼ばれたその先輩は、「この2人が高い音出せてるから……えっと、山内さんと、広野さん?」と、私たちの名札を覗き込みながら言った。



えっ………今、なんて?



もしかして、受かるかもしれない…!?



先生は、「じゃ、一応その2人優先ということで、考えておくね」と先輩に言ってから、「それじゃ、3人とも、お疲れ様」と私たちに言った。



心臓のドキドキは、まだ治まらない。


来週、全てがわかる。トランペットができるかどうか────


どうか、私に、トランペットを、やらせてください────
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