あの夏の続きを、今
体育館からは、ダン、ダン、と重いボールをドリブルする音が聞こえてくる。
開いた窓の隙間からちらっと中を見ると、やはり女バスの人達が朝練をしていた。
────あの中にはレナもいる………
胸が、ちくりと痛む。
今でもこうやって、レナを目にすると、あの嫌な思い出が蘇ってきてしまう。
────“裏切り者は………もう二度と、近づかなくていいんだからっ!!!!”
あの時の私の言葉が、胸の中で反響する。
コンクリートの壁に跳ね返った言葉は、私の心の奥深くへと刺さったままだ。
あれは確かにレナに向かって言った言葉────
けれど、今となっては、心の中に蘇ってくるその言葉は、私自身に向けられているもののように感じる。
────裏切り者はレナじゃない、私だ。
許しを求め、もう一度歩み寄ろうと、生まれ変わろうとしていた、そんなレナを私ははっきりと拒んだのだ。
レナは悪くない、本当に悪いのは私だ。
そして、もう、私はレナに近づける資格なんてないんだ────
永遠に────
昨日の余韻でウキウキしていたはずの心は、いつの間にか、このどんよりとした曇り空と同じように、暗く沈んでしまっていた。
こんなんじゃいつまで経っても私は明るい性格にはなれないな、そう思いながら、私は朝練を続けた。
ぽつ、ぽつ、と、私の真上を覆うトタンの屋根が音を立て始める。
────雨だ。
ぽつ、ぽつ、 ぽつぽつぽつぽつ────
一気に降り出した雨の音の中で、私は嫌な気持ちをどこかへ飛ばすように、トランペットの音をひたすら響かせた。