あの夏の続きを、今


朝練の時間が終わり、音楽室で楽器を片付けていると、アカリ先輩がやってきた。


「志帆ちゃん、これ、8月のU小の夏祭りで演奏する曲の楽譜だから、練習しといてねー」


そう言って私に1枚の楽譜を手渡すと、そのまま音楽室を出ていった。


渡されたポップス曲の楽譜を早速見てみると、左上には「Tp.2」の文字がある。


……2ndか。


また、何だか複雑な気分になりながら、その楽譜をファイルにしまい、荷物をまとめて音楽室を出る。


雨は当分止みそうにない。


別棟から1、2年生の昇降口までの間には屋根がないので、私は雨に濡れないようにダッシュで昇降口へと向かう。


靴を履き替えながら、さっき貰った楽譜のことを考えていた。


私たちトランペットパートでは、後輩の吹くセクションは曲ごとに毎回変わり、誰がどれを吹くかは先輩が決めることが多い。


私とカリンは、吹くセクションを決める時、アカリ先輩と3人で話し合って決める。


このとき、私もカリンも、同じセクションを同じ回数だけできるように数を調整する、という暗黙のルールがある。


例えば、ある曲で私が2ndを、カリンが3rdを吹いたら、次の本番ではカリンが2ndを、私が3rdを吹くことになる。


だから、てっきり今回は、「せんばやま変奏曲」で既にカリンが私よりも1回多く1stを貰っているから、その次に配られたこの曲では私が1stになるものと思っていた。


けれど、今、私に渡されたのは確かに2ndの楽譜だ。


おかしいな。今まではずっと、この「暗黙のルール」に従って決めてきたのに────


今回が初めての例外だ。一体、どうしたのだろう。


まあ、でも、次の曲ではたぶん私が1stになるんだろう。


そう思って、あまり深く考え込まないことにした。
< 235 / 467 >

この作品をシェア

pagetop