あの夏の続きを、今
「せんばやま変奏曲」の2ndの最高音は高い「ミ」だが、1stの最高音はそれよりももっと高い「ラ」の音だ。
今回のコンクールでは、私は高い音の練習はあまり必要ないけれど、それでも、今後は私にも1stを吹く機会がやって来るだろうから、スケール練習では高い音の練習もする。
アカリ先輩が引退したら、私はずっと1stを吹き続けることになるだろうから、それまでにしっかりと高音を吹けるようになっておかなければ。
この学校では、入学式の入場曲は毎年「アルセナール」と決まっているらしいが、「アルセナール」の1stの最高音は、高い「シ♭」だ。
ここまでは確実に吹けるようになっておかないと……
────アカリ先輩に頼らなくたって、吹けるようにならないと。
そんな使命感を持って、私はメトロノームに合わせ、高い「ド」から、レ、ミ、ファ……とだんだん音を高くしていく。
ソ、ラ、シ────
そこから先は、音が掠れてしまって出なかった。
でも、今日は、高い「シ」まで出せた。
いつもに比べたら、上出来だ。
普段は、高い音を出すのは、もっと苦しいんだけど。
それから、今度は「民謡音階」の練習をする。
前に、寺沢先生から、「せんばやま変奏曲」では「民謡音階」という音階が使われているから、民謡音階でのロングトーンやスケールも練習しておくように、と言われた。
「せんばやま変奏曲」の中に出てくる民謡音階────ミ、ソ、ラ、シ、レ、ミ、の順番に、私は音を合わせていく。
西洋音楽の音階とはまた違う、独特で和風な感じのする音の並びだ。