あの夏の続きを、今
不信感
【2015年 7月下旬】
あれからずっと、ひたすらコンクールの練習で忙しい日々が続いた。
寺沢先生の指導は相変わらず厳しいが、それでも、部員たちはだんだんと慣れてきたようだ。
最初は、怖いとか、やっていける気がしないとか、そんな声が1年生からも2、3年生からもたくさん上がっていた。
けれど、何度も合奏をして、過去の自分たちには決してできないであろう演奏に少しずつ近づいていくのを、皆が実感し始めるようになってきた。
────このまま、最優秀賞取れそうじゃない?
────来年、もしA部門に出ても、普通に戦えるレベルな気がする!
どこからかそんな声が聞こえてくるようになって、雰囲気はどんどん良い方へと向かっていくような気がした。
私自身も、過去の自分よりも日に日に実力をアップさせていっている実感があった。
私だって、やればできる。そんな自信が、ついてきた。
最優秀賞だって、夢じゃないかもしれない。
松本先輩みたいな演奏ができるようになることだって、夢じゃないかもしれない。
ただ、「完璧」と言えるレベルには、まだまだ届いていない、そんな気がした。
「せんばやま変奏曲」の2ndに出てくる音域の音は、正確なピッチと綺麗な音色で出せるようになってきた。
けれど────それよりも高い音は、まだまだ難しい。
松本先輩やアカリ先輩みたいに、1stを楽々吹けるぐらいには高い音を出せるようになっておきたいんだけど────これだけは、なかなか思うようにはいかなかった。
けれど、カリンも同じように高い音には苦労しているみたいなので、遅れをとっている、と感じるようなことはなかった。