あの夏の続きを、今
────期待と不安の入り混じった複雑な気持ちを抱えながら、コンクールの練習に励んでいた、ある土曜日のこと。
今日は例によって1日練習だが、アカリ先輩はどこかの高校のオープンスクールに行っていて休みだ。
蒸し暑い音楽室で朝の出欠をとった後、前に立っている部長さんが話し始める。
「今度、8月初めにあるU小学校の夏祭りで演奏する曲の追加の楽譜が届いているんで、パートリーダーは取りに来てください」
そう言われて、あちこちでパートリーダーの3年生が立ち上がり、前に楽譜を取りに行く。
だが、トランペットパートのパートリーダーは今日は不在だ。
私とカリンは顔を見合わせた。
(2年生が代わりに行かなきゃいけないよね。どっちが行く?)
(志帆が行ってきたら?)
(わかった、じゃあ、行ってくる)
私とカリンは目線だけでそんな会話を交わした。
そして、私は椅子から立ち上がり、楽譜の束を取りに行く。
2曲分積み重なった楽譜はかなりの量だ。
楽譜を受け取った人たちがそれぞれの席に戻った後、部員たちはそれぞれ、いつもの練習場所へ向かう。
私は、1年生たちに「私とカリンは楽譜の整理してるから、先に外出てていいよ」と言ってから、音楽室でカリンと一緒に、さっき受け取った大量の楽譜の整理を始めた。