あの夏の続きを、今


基礎練習を終えた後、私は先ほど配られた曲の1stの練習を始めることにした。


楽譜の左上の「Tp.1」という文字を見ただけで、とてつもない緊張感とプレッシャーに押し潰されそうになる。


2ndや3rdとは明らかに違う輝きを、楽譜に書かれた一つ一つの音符が放っているようにも見える。


吹奏楽で一番目立つ楽器、トランペット。その中でも最も目立つ1st。


メロディーで全体をリードするこのパートは、最もミスが許されないパートでもある。


私は楽譜を一通り読んで、さっそく曲を吹き始めた。


曲全体の要である、高音のメロディー。


遠くに見える、青く透き通った夏の空へと飛ばすように、一生懸命吹く。


だが、なかなか思うような音は出ない。


高い音になると、どうしても音が弱くなってしまうし、すぐにバテて吹けなくなってしまう。


私が想像していたよりも、何倍も1stというのは難しいし、苦しい。


────だが、この苦しさに耐えられるようにならなければ、私は松本先輩のようなトランペッターにはなれない……


カリンは私以上に1stのハイトーンの練習を頑張っているが、まだまだ松本先輩やアカリ先輩のように、上手くはいっていないようだ。


今の地点でのカリンの能力と、プレッシャーに弱いというカリンの性格を考えると、アカリ先輩が引退してからはカリン一人では1stはできないだろうから、私とカリンの2人で1stを吹くことになるだろう。


だから、その時に備えて、なんとしてでも1stをできるようになっておかないと。


トランペットといえば、高音のメロディーなんだから。


1stの高音が出ないのに、トランペットなんてやってられるわけがないんだから。


高音が出せないのに、松本先輩みたいなトランペッターになりたい、松本先輩を超えたい、いい先輩になりたいなんて、絶対に無理なんだから。
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