あの夏の続きを、今
パート練習の時間は、相変わらず、アカリ先輩とカリン、私と1年生たちに分かれての練習だった。
もうコンクールも近いのに、パートメンバー6人全員揃っての練習が行われる気配は一向にない。
そのことがますます、私の不信感を強めていった。
後輩の面倒を見ていく中で、ふと思った。
────私は、パートリーダーになれるのだろうか。
そろそろ、次のパートリーダーを決める時期が近づいてきている。
パートリーダーは先輩が決めるらしい、という噂を以前耳にしたので、私はそのことも気がかりだった。
もし、アカリ先輩が次のパートリーダーを選ぶんだったら────
もしかすると、私はパートリーダーになれないんじゃないのか。そんな気がしてきた。
────でも、アカリ先輩が私を嫌っているとしても、さすがに自分の好みだけでパートリーダーを選んだりはしないだろう、と心のどこかで思っていた。
カリンはパートリーダーとか、責任の重い仕事をとにかく嫌がるタイプだし、逆に私はパートリーダーをやりたいと思っているし、後輩とも仲良くやっているから、まさか2人の意思を両方とも無視してカリンをパートリーダーになんかしないよな、と思っていた。
だが────
練習を終えて音楽室を出ようとした時、アカリ先輩にもう一枚楽譜を渡されたのだ。
8月上旬に、近くの公民館で行われるイベントで演奏することが急遽決定し、そこで演奏する曲を新たに追加したのだという。
その楽譜の左上には────
やはり、「Tp.2」の文字があった。
────どうして!?
────もう、何も信じられない!
言葉にならない、いや、言葉にできない怒りのようなものを抱えたまま、私は楽譜を受け取ると、すぐにアカリ先輩のもとを離れ、思いっきり不機嫌な顔をして、何も言わずに音楽室を出た。
それ以来私は、コンクールの直前までずっと、口に出すことは決してないけれど、この不満を抱えたまま、アカリ先輩とは一言も話さないまま、過ごしてきた。