あの夏の続きを、今



────そうして迎えた、8月のある日のこと。






私は体育館の横────いつもの練習場所に、手ぶらで立っていた。


何故自分がここにいるのか、私には分からなかった。


あちこちから蝉の鳴き声が降り注いできて、茹だるような暑さは収まりそうにない。


倒れそうになりながら当てもなくふらふらと歩いていると、視界の中に、突然レナが現れた。


────!!


レナの姿を見た途端、私の身体が硬直した。


レナは私の方へと振り返り、言葉を発した。


レナの声ではなく、私の声で。





────裏切り者は………もう二度と、近づかなくていいんだからっ!!!!



────裏切り者は、もう二度と…………絶対に、…………絶対に、…………親友なんかじゃ、ないんだからーーーーーーーっ!!!!!




そう言い放って、私に背を向けて走っていくレナ。


だが、それを追いかけたり呼び止めたりする気力は、もはや私にはなかった。


ただ、呆然と立ち尽くすほかはなかった。


だって────きっとあれはレナではない。


あれは、私自身なんだから。


私自身の発した言葉が、そのまま私自身を苦しめているんだから。


因果応報だ。


果てしない暑さと蝉の声の中、ふらふらと遠のいていく意識の中で、そんなことを思った────






────そして、目が覚めた。





いつもと同じ、朝日の差し込むベッドの上。



────なんだ、夢だったのか。



私は机の上に置いてある、カレンダー機能付きの電波時計を見る。


目覚ましをセットしている時間よりも、少し早く目が覚めてしまったようだ。


────最悪な夢だった……


カレンダーの日付は、コンクールの前日の日付を指している。


────もう、明日が本番か…


そう思いながら、私は部活に行く準備をする。
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