あの夏の続きを、今
────どうして、私とカリンの両方の意思を無視して、カリンをパートリーダーにするの?
────どうせ、カリンだけ贔屓してるんでしょ?
────どうせ、私のことなんて、信用してないんでしょ?
そんな思いが、理性さえも押し潰していく。
その時、私の頭の中で、何かがぷちん、と切れる音がした。
「………………ない……」
「えっ!?」
気がつくと、私は両方の拳をぎゅっと握りしめ、下を向いたまま、感情を押し殺した声で、静かに、けれど確かに、怒りをこめた言葉を発していた。
────アカリ先輩に向かって。
「先輩は…………なんにも、……分かってない」
気づけば、私はそんな言葉を口にしていた。
今まで抱え込んできた不信感と怒りが、言葉に変わって、溢れ出していく。
そんな私の様子に、アカリ先輩やカリンだけでなく、周りにいる部員たち全員が、呆気にとられたような表情で、黙ってこちらを見ている。
「先輩は、……なんにも分かってないじゃないですか。………私の気持ちも……カリンの気持ちも……」
そこまで言ったところで、私は顔を上げ、アカリ先輩を睨みつけるようにして言った。
「………………何もかも、分かってないじゃないですか!!!」
そのまま、私は止めどなく溢れ出していく怒りだけに身を任せ、アカリ先輩に背を向けると、そのまま荷物を持って音楽室を飛び出した。
誰も私を止める人はいなかった。
音楽室の中にいる人達は皆、何が起こったのか分からないといった感じで、その光景を呆然と眺めていた。
私は何も言わず、ひたすら走った。
────アカリ先輩は、私のことなんて何にも分かってないんだから!
────こうなって当然なんだから!
────あんな先輩、大っ嫌い!私は絶対、あんな先輩にはなりたくない!
────アカリ先輩の後輩なんかに、なりたくなかった!
────もう、とっとと引退してしまえばいいんだ!
そう心の中で叫びながら、私はわざとドスンドスンと強い足音を立てながら、別棟の階段を降りていった。