あの夏の続きを、今

本当の意図





【2015年 8月中旬】





────次の日……


いよいよ今日は、吹奏楽コンクール中学校B部門の本番。


出番が午前中なので、朝は学校での音出しはせず、音楽室に集合したらそのまますぐにトラックに楽器を積み込む。


────松本先輩たちの夢を叶えられなかったあの日から1年。


それは、「やっと」1年のようにも思えるし、「もう」1年のようにも思える。



アカリ先輩は、朝から一度も私に話しかけてはこない────まあ、私があんなことを言ってしまったから当然なんだけど。


アカリ先輩だけでない。カリンや後輩たち、他のパートの人達も、私に対してどことなく遠慮がちになり、距離を置いている、そんな気がする。


────でも、私は悪くないもの。


────後輩の気持ちを無視するアカリ先輩が、全部悪いんだもの。


────カリンばっかり贔屓するのが悪いんだもの。


階段の下に下ろした打楽器を持ち上げ、降り注ぐ朝日と蝉の声の下を通り抜け、トラックまで運んでいく。


その間ずっと、私は頭の中で呪文のように、アカリ先輩は最低だ、わからずやだ、と繰り返していた。



────先輩は…………なんにも、……分かってないじゃないですか。



昨日、静かな音楽室に放たれた私の言葉が、ずっと頭の中に残っている。


────まるで、サラを突き放した、あの時の繰り返しみたいだ、と思った。


怒りだけに身を任せ、残酷なまでの言葉を発して。


────でも、今回は違う。


あれは、アカリ先輩が一方的に悪いんだから。


私にあんなことを言われて、当然の行いをしてきたんだから。



────私は悪くない。
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