あの夏の続きを、今
やがて、バスは会場に着いた。
トラックから楽器を下ろし、冷房のよく効いた楽器置き場に運ぶ。
この会場に来るのも、もう4回目だ。
見慣れない制服を着た人たちが、ロビーや楽器置き場を慌ただしく行き来している光景を見ると、ああ、本番なんだな、と実感する。
楽器を運び終えて、集合時間が近づいてきてから、移動の準備。
楽器ケースから銀色に輝く私のトランペットを取り出す。
いつもと違う場所で、いつもと違う輝き方をしている楽器。
本番の時は、一刻一刻と近づいてきているんだなと実感する。
けれど、不思議と緊張はしてこなかった。
この前の吹奏楽祭でもここで演奏したし、もうこの会場での演奏にも慣れてきたからだろうか。
楽器、楽譜、チューナー、タオル。必要なものを持ったら、パートごとにロビーに整列する。
トランペットパートの先頭はアカリ先輩。その後ろにカリン、その後ろに私。
その後ろに、3人の後輩たちが並ぶ。
私はトランペットをぎゅっと抱きしめる。
────とにかく、今は、演奏だけに集中しよう。
どんなに人間関係がこじれたって、それを演奏にまで持ち込むわけにはいかない。
泣いても笑っても、私が今回2ndをやるという事実は変わらないんだから、それなら今日の演奏では、2ndとしての役目を精一杯果たそう。
それが、私に与えられた役目なんだから。
今の私にできることは、それだけなんだから。