あの夏の続きを、今


舞台裏に並んで、前の学校の演奏が終わるのを無言で待つ。


ここまで来るとさすがに緊張も高まってきた。


────頑張らないと。最優秀賞を取るために。


松本先輩の後輩として、叶えられなかった夢を果たすために────


私はトランペットを握りしめて、今も遥か遠くでコンクールの練習をしているであろう松本先輩を想った。


届けよう。私の全ての音を。


あの日叶わず散った夢の欠片を、もう一度、形にするんだ。



────そして、前の学校の演奏が終わった。


私たちの番だ。


ゆっくりと進んで、ステージへと向かう。


私は後ろを振り返り、「一緒に頑張ろう」と3人の後輩たちに言うと、3人とも笑顔でうなずいた。


私はステージのひな壇の上に上がり、カリンの隣に座った。


全員が着席すると、ステージの照明が一気に明るくなる。


────いよいよだ。


────今度こそ、ここで夢を叶えてみせるんだから。




『プログラム6番、O市立J中学校

福島 弘和 作曲 「せんばやま変奏曲」

指揮 寺沢 弘樹』



寺沢先生が観客に向かって一礼してから、指揮台に上がり、私たちの方を向く。


(大丈夫)


先生は普段の厳しさとは対照的な笑顔を浮かべ、そう口パクで言ってから、指揮棒を構えた。
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