あの夏の続きを、今
そして、曲が始まる。
3連符のリズムにのせて奏でるイントロ。
タララ、タタタ、タタタ。
1年生の音もしっかりと揃っている。
頭の中に、今まで寺沢先生に言われた言葉の一つ一つが蘇ってくる。
(ピッチとリズム。それを意識するだけで、音の80%は変わる)
この曲で大事なのはリズム感だ。
自分の音だけでなく、常に周りに意識を向けて。
全員の音が一つになり、イントロから主題へと移る。
楽器たちが、まるで本当に「あんたがたどこさ」を歌っているように、互いに呼びかけあって表現する主題。
(ここは会話だ。次に吹く楽器に、話しかけるんだよ)
メゾピアノからメゾフォルテへ、そしてフォルテへ。少しずつ一体感が増していく。
そして、音の高い楽器から順番に、フォルテピアノからのクレッシェンド────
そして、バージョン1。
輪唱のように、2つのパートが1小節ずつずれて入ってくる。
そして後半になると、パートは3つに増える。
バラバラのタイミングで思い思いに奏でられていたメロディーは、突然重なり、同じリズムを奏でる。
(なんでここにフォルテがあるのか。よく考えろ。ここは、はっとさせる部分なんだよ)
そして最後のフレーズが始まったかと思うと、再び3つのパートは入るタイミングをずらす。
そして、リタルダンドとデクレッシェンド────
バージョン2だ。
静かに、ゆっくりと、優しく響くメロディー。
低音楽器が加わり、トランペットも加わり、だんだんと音の厚みは増していく。
そして、フォルテから一気にクレッシェンドして────