あの夏の続きを、今


再びテンポは速くなり、雰囲気はがらりと変わる。


お祭りの囃子のように、明るく陽気に16分音符が跳ねるバージョン3。


最もリズム感が求められる場所だ。


タン、タタタラタタタラタンッ。

タン、タタタラタンッ。


(自分と同じ動きのパートだけじゃなく、自分と全く違う動きのパートの動きも聞かないと、いつまで経ってもまとまらないぞ)


私は裏打ちの低音楽器と交互に音を重ね合うようにしながら、メロディーを吹く。


金管楽器の中で、ここで主旋律を吹いているのは私だけ。1stは、ひたすら高い「ミ」の音を主旋律の上に重ねている。


それぞれのリズムが複雑に重なり合いながら、途絶えることなく16分音符が続いていく。


そして、主旋律と裏打ちが交互に音を出しながら、4小節かけて全員で少しずつクレッシェンドしていって────


バージョン4。ここもたくさんの16分音符が並んでいる。


何度も練習したシングルタンギング。タイミングはバッチリだ。


それぞれの音が交互に掛け合いながら、あるタイミングを境に全員のリズムは一つになる。


タタタッタタ、タッタタ、タッタタ、タッタタ、タッタタ!!


最後のリズムが決まった後の、一瞬の静寂の後、重々しく妖しげなバージョン5に移る。


そして、ティンパニの音を合図に、バージョン6へと移る。


繊細で静かなメロディーから始まり、そこに少しずつ伴奏も加わっていく。


伴奏の連符は少しずつ少しずつ細かくなっていき、主旋律の楽器も少しずつ少しずつ増えていく。


そして、気づけば全員がそこに加わり、壮大なメロディーを奏でる。


フォルテからフォルティッシモへ。そして、さらにクレッシェンド────
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