あの夏の続きを、今
それから長い長い時間が過ぎ、全ての学校の演奏が終わった。
もう少ししたら、ホールで結果発表が始まるはずだ。
ホールの中は既にたくさんの生徒や保護者でごった返していた。私たちが演奏していた時よりも、遥かに多い。
たかが中学B部門でもこれだけの人数が押し寄せるのなら、高校A部門とかだったらどれだけの人口密度になるんだろうか、などと思いながら、私はプログラムの冊子を眺めて時間を潰す。
かなり長い時間が経って、ようやくステージの上に背の高い中年男性の姿が現れると、ざわめいていたホールは一瞬にして静かになった。
マイクを通して聞こえてくる、その人の長い話は全く耳に入ってこない。
話が終わるまでの間、私は1年前の今日、ここで散った夢に思いを馳せた。
あの時────
私たちは祈りを捧げるように、指を組んで俯き、目をぎゅっとつぶって、結果を言われるのを待っていた。
一年前のあの瞬間、「優秀賞」という声が聞こえてから、私はそのまま最後まで顔を上げることができなかった。
1年生の私でもあれだけ悔しかったのだから、2年半も吹奏楽を続けてきた松本先輩は────
私は松本先輩が涙を流すところを見たことがないけれど、松本先輩は私の何倍も、何十倍も悔しい思いをしたんだろう────
だから、何としてでも、私がそれを晴らさなければ。
話を終えた男性がステージを離れ、代わりに小太りの男性がマイクの前へと出てきた。
「それでは結果発表に移ります」
その人がそう言ってから、私ははっと顔を上げた。
────いよいよだ。