あの夏の続きを、今
それから、私たちはバスに乗り、学校へと戻る。
誰もが皆、満足そうな顔をしている。
今まで優秀賞の常連だった弱小校が、寺沢先生のおかげで念願の最優秀賞を手にすることができたのだから。
だが、バスが学校に近づいていくにつれ、私の心の中には、また、忘れていた不満が蘇ってくる。
────学校に戻ってくれば、そのまま先輩の引退式。
だけど、私は────
私には、心を込めた引退式なんてできない。
アカリ先輩に対して、こんなに不満ばかり抱えているのに────
一応、先輩へのプレゼントは用意しているし、後輩たちからの演奏の練習もこっそりしていた。
もちろん、その演奏では私とカリンの2人で1stを吹く。
けれど、それは全て形だけ。
気持ちなんて、全くこもっていない。
というか、込めたくない。
早く、終わってしまえばいいのに────
学校に戻ってきてからは、慌ただしく楽器を片付けて、3年生が外に出ている間に1、2年生で引退式の準備をした。
それから、綺麗に飾り付けがされた音楽室で、引退式が始まった。
後輩からの演奏。後輩からのメッセージ。プレゼント交換。パートごとの最後の交流────
私は、アカリ先輩に届けるそれら全てを「形だけ」で終わらせた。
気持ちなんて、全くこもっていない、形式だけの引退式。
別にそれでいい。アカリ先輩だって、それは同じだろう。
アカリ先輩も、嫌いな後輩ともう関わらなくてよくなるんだから、それでいいはずだ。
引退式が終わり、辺りも暗くなり始めてから、一人二人と帰る準備をし始めたころ、私は音楽室の片隅でそっと、アカリ先輩から貰ったプレゼントの包みを開けた。
中身は、うさぎのキャラクターの小さなぬいぐるみのキーホルダーと、お揃いのキャラクターの柄のノート。
────これは気に入ったから、大事に使おう。
そう思って、私は開いた包みをもう一度元に戻してから、ナップサックの中に入れた。