あの夏の続きを、今
曲がラストスパートに差しかかってくると、私はカリンの方に身を乗り出して、1stのソロの部分の楽譜を見ながら、耳を澄ませた。
────ラーラーラーーラー、たったったったーん、パパパーン!!
たった2小節間の短いトランペットソロだが、私もカリンも、はっと息を呑んだ。
────かっこいい………!!
曲全体を締めくくるようなソロ。
何てかっこいいんだろう。
このソロを、コンクールのステージで決めることができたら、どんなにかっこいいだろう。
このソロをやってみたいな、と一瞬だけ思った。
まあ、たぶん、ソロをやるのはカリンで、私は2ndになるんだろうけど……
でも、ソロはできなくても、この曲はやってみたいな、と思った。
難易度は低そうだし、シンプルだし、明るい爽やかな雰囲気が夏にぴったりな感じがするし。
「じゃあ、次、スペインいくぞー」
寺沢先生はそう言うと、「スペインの市場で」を流し始めた。
その後は、「ある英雄の記憶」「クローバー グラウンド」も聴いた。
どれも良さそうな曲だ。
「スペインの市場で」は、大人っぽい雰囲気で、演奏者一人一人に高い技術が求められそうだ。特に打楽器は。
「ある英雄の記憶」は、ゲーム音楽みたいなファンタジーっぽいイメージで、自由曲並みに体力が必要になりそうな曲だ。
この曲にもトランペットのソロがあるが、「マーチ・スカイブルー・ドリーム」のソロよりもかなり音が高い。
「クローバー グラウンド」は、「マーチ・スカイブルー・ドリーム」に比べると曲想が変化に富んでいて、テンポが曲中で変化する。
あまりマーチっぽくない雰囲気のマーチで、難易度はこちらのほうが高そうだ。