あの夏の続きを、今
冬は最終下校の時間が少し早くなっているが、それでも外はかなり暗くなってきている。
音楽室に置いてある荷物を持って、いつものように「ありがとうございました」と言って音楽室を出る。
「寒っ……」
外はあまりにも寒い。私は急いでマフラーと手袋をつける。
自転車に乗って、校門を出てから、冷たい空気の中を進んで、家へと向かう。その間、私は頭の中でいろいろと思いを巡らせる。
中学最後のコンクール、そして記念すべき初めてのA部門出場。
「青い空」のイメージの課題曲、「マーチ・スカイブルー・ドリーム」と、「青い海」のイメージの自由曲、「じんじん」。
青い空といえば、いつも私は、合奏の時には窓から見える空に浮かぶ雲を目がけてトランペットを吹いている。
「空」は、いつも私のそばにある存在。
だから、曲の表現のイメージもつかみやすいだろう。
ただ、「海」のイメージは、私の中ではほとんど空想の世界でしかない。この辺りは海から遠く離れたところだから、海の風景を生で目にすることなんて、まずないからだ。
私たちは3年生の5月に、修学旅行で沖縄に行く予定だから、その時に沖縄の海の風景を頭に焼き付けておこう。
演奏に活かせるものが、そこできっと得られるはずだ。
そういえば、A部門に出たら、私たちは何を目標にすればいいんだろう。
地区大会、県大会、中国大会、全国大会。一体私たちの実力で、どこまで進めるのか。全く見当が付かない。
寺沢先生が以前勤めていたK中学校は、中国大会ではいつも金賞で、時々全国大会に出ていたというから─────私たちには、中国大会ぐらいなら進めるんじゃないだろうか。
とにかく、どこまで行けるか分からないけれど、私たちに出来る最高の演奏を目指そう。
私たちの学年にとっては、最後のコンクールなんだから。
今まで以上に、頑張らないと。
「空」と「海」の音楽に、思いを託して。