あの夏の続きを、今
そんなことを話しながら歩いているうちに、いつの間にか二人の帰る方向が分かれる交差点まで来てしまった。
私は別れる前に、もう一度、街灯に照らされた松本先輩の姿をよく見てみる。
背は高く、大人っぽい顔立ち。エンブレム付きの紺色のブレザーに、青系のストライプのネクタイ。
私が普段から学校で見ている中学生の男子とは、明らかに別格といった感じを漂わせている。
やっぱり、松本先輩は、中身も見た目も、大人っぽくて、かっこいい。
こんな人と一緒にいたら、好きにならない訳がない────多分私以外の人には理解できないだろうけど…………
松本先輩は自転車にまたがってから、私の方を見て、言った。
「これから練習大変になるだろうけど、頑張ってね!応援してるよ!」
「ありがとうございます!」
「じゃあね!バイバイ〜」
そう言うと、松本先輩は交差点の向こうへと去っていった。
松本先輩の姿が完全に見えなくなったことを確認してから、私も自転車にまたがり、再び坂道を上り始める。
嬉しさでなかなか落ち着けない。
────幸せだ。
松本先輩に会えるなんて、本当に幸せだ………
次はいつ会えるのか分からないから、あの優しい笑顔を、しっかりと心に焼き付けておかないと。
そして、練習の時にはいつも、それを思い出すんだ。
そうすることで、頑張ろうって気持ちになれるから。
いつか、先輩に想いを伝える日のために。
いつか、先輩を超えられるようなトランペッターになるために。
私はこれからも、練習を重ねていくんだ。
大好きな、松本先輩のために、「空」と「海」の音楽をこれから作り上げていくんだ────