あの夏の続きを、今
前の学校の演奏が終わった。
次が私たちの番だ。
私のソロは、曲の冒頭部分。
ステージへと進みながら、震える手を胸に当て、何度も何度も深呼吸する。
全員が席に着いた。私の左隣にはカリンではなく、トロンボーンの同級生がいる。しかし右隣には、いつもと同じように3人の後輩がいる。
『プログラム10番、O市立J中学校』
ステージの照明が明るくなり、アナウンスが入ると同時に、私は正面を向いた。
指揮台に立った寺沢先生が、指揮棒を構える。
それと同時に、私はすっと立ち上がり、真正面へトランペットを構える。
先生が振り上げた指揮棒の合図で、大きく息を吸う。
────そして、曲の始まり、トランペットソロ。
ゆったりと流れるような旋律を、たっぷりの息で響かせる。
この大きなホールの一番後ろまで、届くように。
────うまくやれるはず。
────カリンの分まで。自分を信じて。
そして、私は1度もミスすることなく最後の音を吹き終えた。
────やった!!
私は笑顔で一礼すると、再び席に着いた。
私はほっとして、次のフレーズのために楽器を構えた。