あの夏の続きを、今
「それでは、広野さんにはこちらの資料をお渡ししますね」
そう言うと木村先生は、分厚いクリアファイルを私に差し出してきた。
中身は、浜百合高校のパンフレットと入試関係の資料だった。
「それでですね、浜百合高校には成績による特待生制度と、部活動での実績による特待生制度がありまして」
そう言いながら木村先生は、資料を取り出して指差してみせる。
「優秀な成績を納めれば学費が全額免除になりますし、部活動で優秀な実績を収めた者も学費の一部免除の対象になりますので、ぜひ親御さんとも相談して、うちを受験するかどうか決めて頂ければと思います。あ、それから、寮の案内もこちらに入れておりますので」
「わ、わかりました」
「それから、今週末にはうちの吹奏楽部の定期演奏会がありますので、ぜひそちらにもお越しください」
そう言うと木村先生は、定期演奏会のチケットを2枚、私に差し出してきた。どちらも「招待券」と書かれている。
「え、いいんですか!?ありがとうございます、それではまず演奏会の方にお伺いしますね」
私はチケットを受け取ると、先程のクリアファイルにそっとしまった。
クリアファイルに透けて見えるパンフレットの表紙には、テレビでしか見たことのない綺麗な制服を来た男女が並んでいる。
────あの浜百合高校が、私を……
いつの間にか、私の演奏はそこまで到達していたなんて……
夢か現実かもわからない出来事に、私はどうすればいいのか分からずにいた。