あの夏の続きを、今


木村先生の話が一通り終わった後、私は音楽室に戻ってきた。


「あ、志帆帰ってきた!」
「何の話だったの?」
「気になる〜」


同じ学年の部員たちが次々に私の元に詰め寄ってくる。


私は先程の出来事を事細かに話した。


「えっ、あの浜百合高校!?確かに志帆はトランペット上手いけど、まさか浜百合からスカウトなんて!」
「志帆、すごい名誉じゃん!もう浜百合行くしかないでしょ!志帆なら頭良いし余裕だよね!」
「私、去年のテレビのマーチング特集の浜百合の演奏聴いたよ!めちゃくちゃすごいよあそこは!」
「志帆、トランペットすっごい上手だし、浜百合でも活躍できるはずだよ!」


皆が次々に驚きの声を上げる中で、私はカリンに話しかけた。


「あの、カリン、なんかごめんね、本来ならカリンがこうなるはずだったのに、私がソロ吹いちゃったから、なんか…」


私がそう言うとカリンは、「いやいや、それは志帆の実力でしょー!カリンは浜百合みたいなすごいとこでやっていける自信ないし、志帆が認められるのすごく嬉しいよ!カリン、熱出してよかったかも!」と無邪気に笑ってみせた。


一方、他の部員たちもずっと、浜百合高校の話で持ち切りだ。


「浜百合ってどのへんにあるっけ?確かめちゃくちゃ遠いよね」

「一応県内ではあるんだよね」

「確か、海のすぐ近くだったと思う」

「海かー、めちゃくちゃ遠いね」

「確か電車で2時間はかかると思う」

「そんな遠くに!?志帆、どうやって行くの?」

「えっと、寮に住むことになるかな」

「寮なんてあるんだ!ってことは、一人暮らし?やるじゃん!すごい!」

「え、いや、でもまだ浜百合に行くって決めた訳じゃないからね!?私、ずっと東神に行くつもりだったし」

「東神!?志帆、頭良い〜!浜百合と東神で悩めるなんて、贅沢だね〜」
< 307 / 467 >

この作品をシェア

pagetop