あの夏の続きを、今


カリンと話しながらホールの1階の客席に入ると、またしても見たことのない光景に驚いた。


前の方の席には「招待券」「指定席」の文字が書かれた紙がずらりと貼ってあるのだ。


「えーっ、指定席とかあるの!?浜百合ヤバすぎ!!」


ホールを見回してみると、1階も2階も真ん中のほうはほぼ指定席で、当日券の自由席は端っこの方に僅かにあるだけだ。


「うわー、東神のと全然違う!これが格の違いってやつ?」

「でも、志帆が貰ったのって招待券でしょ?だったら、この前の方の席座れるじゃん!」


カリンはそう言いながら、「招待券」の紙が貼ってある、前の方の真ん中辺りの席を指さす。


「そうじゃん、招待券じゃん!うわー、すごいラッキーだね、私たち!こんな良い場所でタダで見れるなんて!」


「一生に一度じゃない?もうなんか色々すごいね!」



私たちはカリンの指さした方の席に二人並んで座った。


開演までの間、分厚いパンフレットを開いて中身を読みながら時間を潰す。


難曲ばかり並んだ曲目。プロの演奏家とのコラボ。1ページの中にぎっしり詰め込まれた今年度の活動記録。過去のコンクールの記録の中にいくつも並んだ「全国大会金賞」の文字。


どこを取っても、私が見て、経験してきた吹奏楽部の姿とはかけ離れている。


寺沢先生がやって来てからの私たちですら、演奏を聴く前から、全ての面でもう敵わないな、と感じる。
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