あの夏の続きを、今


心臓が、ドキドキと高鳴っている。


松本先輩に会えた喜びで、心が満ち溢れている。


街灯の光に照らされた先輩の姿や、暖かく優しい先輩の声を頭の中で思い返す。


もしも浜百合高校に行ったら、そんな喜びを感じることも、もう二度と出来なくなってしまうかもしれない────


でも、私は松本先輩に誇れるような演奏ができるようになりたい。


自分の演奏で全国大会に出て、松本先輩にはそれを知って笑顔になってもらいたい。


そして、いつかは松本先輩を越えるようなトランペッターになりたい────


松本先輩に会えることも、演奏技術を高めることも、私にとってはどちらも大切なこと。


どちらか一つに決めるなんて────やっぱりできない。


でも、いつかは決めなければいけないんだ。


ここまで来るのにあっという間だったんだから、決断しなければいけない時もすぐ来てしまう。


先延ばしにしてたって、いずれは追い詰められてしまう。


……でも、どちらを選ぶにしても、いつかは必ず松本先輩にこの想いを伝えなければいけない。それだけは確かだ。


この気持ちを伝えないままにしておくなんて、できないから。


最後のコンクールで良い結果を残して、そして、いつか必ず伝えるんだ。


先輩に、「好きです」と。
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