あの夏の続きを、今


私がこれまで「じんじん」を演奏するときにも、私はいつも海のことを思い浮かべていた。


けれど、それまでほとんど自分の目で海を見たことのない私が思い浮かべる海のイメージは、何となくぼんやりしたものだった。


けれど、今私の目の前に広がっているのは、それを根底から覆すような、私の想像とは全く違い、そして私の想像には全く及ばないほどの美しさと清らかさをもった、沖縄の海の壮大な景色だ。


私とハヅキはそこで何枚か写真を撮ってから、その景色をしっかりと目に焼き付けた。


"この修学旅行で、「じんじん」の演奏に活かせそうなものをたっぷり吸収してきなさい。そうすれば、演奏を通じて伝わる「沖縄らしい」イメージが、より明確なものになるから"────寺沢先生からは、そう言われている。


その意味が、少しだけ分かった気がした。

私は「平和の礎」の中央に立つと、もう一度、海の方を眺める。


そよ風の吹き抜ける、穏やかな景色。


なんだか、ここにいると、心が洗われていくような気がする。


不意に、頭の中に優しいフルートの音色が流れ始めた。「じんじん」の中間部の、フルートのソロだ。


ファゴット、オーボエ、クラリネット……フルートのソロに続くように、次々に私の頭の中で、木管楽器たちが優しく歌い始める。


穏やかで優しく、でもどこか切なさも感じられるような曲調の中間部。


まさにこの風景に相応しい気がする。
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