あの夏の続きを、今
そんな私の不安には全く気づいていない様子で、ミホは続ける。
「えー!?志帆が語ってくれないなんて、つまんなさ過ぎるよ!『私、本当は恋してます』って、顔に書いてあるし!」
うっ…「顔に書いてある」…そう言われると、もう反論の余地はない。何しろ、思ったことがすぐ顔に出てしまう私だから。
それに……本当は、これ以上嘘をつくことは、もうしたくない。
「ね?絶対秘密は守るからさっ、教えてよ、志帆の好きな人!」
「ちょ、ミホ、声が大きいっ」
ミホは上目遣いで私の方に迫り寄って来る。前の席にいるハヅキに聞かれたら大変だ。
……でも、吹奏楽部員でないミホには────もういっそのこと言ってしまおうか。
ミホは声を潜めて、私の耳元で囁く。
「ね、だから教えてっ?」
「……うん、わかったよ、ヒントだけならあげるから、当ててみて。超難問だから」
「よっしゃ!受けて立つ!」
通路の向こう側にいる、さっきまでミホと話していた男女は、いつの間にかもう彼らだけの世界に入っていて、私の方には目もくれない。
ミホだけに話すのなら、きっと大丈夫だろう。ミホは松本先輩のことをよく知らないはずだし。