あの夏の続きを、今


私が松本先輩の後について、楽器と譜面台を移動させようとしていると、サッカー部員の一人が松本先輩に声をかけた。


「松本じゃんかー!あの子は後輩?1年生?お前いつの間にそんな先輩らしくなってんだよー、見違えたよ」

「え、いや、そう、なのかな?」


どうやらそのサッカー部員は松本先輩と同じ3年生のようだ。


「松本が先輩になるとか、しかも女子がめっちゃ多い吹奏楽部で指導する立場になるとか、昔は想像すらつかなかったのに」

「お前が本当はそんな頼もしい奴だったなんて、初めて知ったよ」

「柏木がいなくなってから、随分頑張ってるよな」


…などと、サッカー部員たちは口々に松本先輩に向かってそんな事を言いながら去っていった。


松本先輩は少しの間、遠くを見つめて何かを考えているような表情をしていたが、すぐに私の方に向き直って、「じゃあ、さっきの所、もう一回吹いてみる?」と、練習を再開した。
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