あの夏の続きを、今
私たちはそのまま、波打ち際までやって来た。
私はぐるりと辺りを見回す。空も海も、果てしなくどこまでも、遠くへと広がっている。
「じんじん」の終盤の、少し切なげな印象のトランペットとフルートのユニゾンの部分が似合いそうな、穏やかな黄昏時の海の景色だ。
そのまま私は小さな波の中へと、そっと足を進めていく。
寄せて来た波が、私の足首に当たって、ちゃぷん、と音を立てた。
冷たくて気持ちいい。
私はそのままゆっくり足を進めながら、遠くの彼方の水平線を見つめて、あの先には何があるんだろうな、と思いを馳せていると、不意に、私の背後で、ぱしゃんっ、と音がした。
それと同時に、水しぶきが私の背中や頭に降りかかってくる。
「な、何っ!?」そう言いながら振り返ると────
「えへへ、大成功ー!」
そこには、いつの間にやって来たのか、たった今そっちに向かって水をかけました、という姿勢で立っている、カリンがいた。
「あーっ、カリン!私に不意打ちしてくるなんて、いい度胸だね!それーっ!」
私はそう言って、笑いながらカリンに向かって水しぶきを跳ね上がらせる。
「きゃははっ、志帆、こわーい!」
カリンも無邪気に笑いながら、私のかける水しぶきを避けつつ、またこちらに向かって水をかける。
そして、いつの間にか私とカリンの水かけ合戦が始まった。