あの夏の続きを、今
私は慌ててハヅキの方へと向く。
「ちょ、ちょっとハヅキ、余計なことは……」
だが、もう遅かった。
「えー、志帆、もしかして好きな人いるのーー!?」
ハルカが興味津々な顔で私の方へと身を乗り出す。
「え、ちょ、ちょっと……」
…………まずい。
…………これはとてつもなくまずい状況だ。
吹奏楽部員がこんなにいる状況で…………
しかもハヅキは素直に「うん、いるんだよ!」と返事をしている。
どうしよう。
どうしようどうしよう。
「えー、あのクールな志帆に好きな人がー!?これは意外だね!ぜひとも聞きたい所!」とアキ。
……本当にどうしよう。
トランペットパート以外の吹奏楽部員にバレるのは、もう問題ないんだけど────
私の隣にはカリンがいる。
ハヅキ、ハルカ、アキのこの会話を聞いたカリンが、黙っていられるはずなんかない。
カリンは輝くような純粋な瞳で私の顔を覗き込んで、言った。
「カリンも、志帆の好きな人聞きたいーっ!ねえ、教えてー!」
「え…あぁ……う、うん……」
私は慌てながら返事をする。
どうしよう。
もう、後戻りできない状況になってしまった。
カリンに、嘘がバレてしまう。あの時の嘘が。
目の前が真っ暗になってしまったような恐怖に襲われた。