あの夏の続きを、今
カリンは心底驚いた表情で、「えーーー、カリン、そんなことしたっけーー!?全然記憶にない!それ、いつの話?」と聞いてくる。
「中1の秋?冬?そのぐらいかな」
「えーーー……」
カリンはしばらくの間、考え込むような仕草をしていたが、急に私の方に向き直ると、さっき私がしたように、深々と頭を下げた。
「…ひどいこと言って、本当にごめんなさいっ!!」
私ももう一度頭を下げる。
「こっちこそ、嘘ついて本当にごめんなさいっ!!」
するとカリンは頭を上げて、いつもの無邪気な笑顔に戻り、私の手を取って言う。
「じゃあ、これでおあいこだねっ!カリン、もう何も言わないから、志帆が誰を好きでも応援するから、教えて!志帆の好きな人!」
「うん!わかった!」
────私とカリンの間にあった、小さな小さな溝が、すうっ、と消えてなくなっていくのを感じた。
良かった、正直になれて。本当に良かった。
少し離れた所では、4人が相変わらず「志帆の好きな人当てクイズ」に熱中している。
「えーと、今出てるヒント整理してよ!」
「一昨年D組、イニシャルはS.M、ミホ以外はここにいる人全員その人のこと知ってる!」
「わかんないよー!ってか、イニシャルS.Mって誰がいるの?」
「先入観にとらわれたらだめだよ〜」
盛り上がっている4人を横目に、カリンは私の耳元でこそっと呟く。
「カリンの知ってる人なの?」
「うん」私もこそっと返す。
「もっとヒント教えて?」
「えーっとねー、じゃあ……今うちの学校にいる人で、その人のことを一番よく知っているのは、私とカリン」
「えーー!?カリン、仲良い男子なんていないよーー??」
「そこがポイントなんだよ。私とカリンがよく知ってる人。私とカリンの共通点は言うまでもないよね?」
「うん、トランペットパートだけど、それが何か……
…………あっ!!」
カリンははっと顔を上げた。