あの夏の続きを、今
叶わない願い
【2016年 6月上旬】
爽やかな水色のワンピースに着替え、前髪についた寝癖をヘアアイロンで直して、いつもは簡単なサイドテールにするだけの髪も、今日は気合いを入れて頭の横で編み込む。
「東神高等学校吹奏楽部 定期演奏会 2016年6月〇日(日) S町文化会館 大ホール」と書かれたチケットがちゃんと入っていることを確認してから、財布をバッグに入れる。
一通り支度を終えて、もういつでも家を出られる状況になってから、部屋の時計を確認する。
午前10時24分。家を出る時間まで、まだ2時間以上ある。
それなのに、私の心臓はもう、ドキドキと鳴り始めている。
そう。今日は、東神高校吹奏楽部の、定期演奏会の日だ。
去年と同じように、中学校に宣伝に来たシオリ先輩からチケットを2枚買った私は、今日、カリンと一緒に演奏会を見に行くことになっている。
私が松本先輩を好きということを隠す必要がもうなくなったし、吹奏楽部員ではないリサに無理を言って着いてきてもらう必要もなくなったから、私はカリンを誘うことにしたのだ。
カリンも松本先輩を始めとする、東神高校に進学した先輩たちに会いたがっていたし、丁度良かった。