あの夏の続きを、今
半分だけ閉まっている部屋のカーテンを、シャッと引いて全開にする。
キラキラと差し込む、太陽の光。
一面に広がる青い空に、ゆったりと浮かぶ白い雲。
これはまさにスカイブルードリームだな、と思った。
練習番号Aからのクラリネットとアルトサックスのメロディーが、頭の中を流れて行く。
────今年も、夏が始まる。
────中学最後の夏が。
私は机の上に置いている楽譜ファイルをなんとなく開いた。
中学最後の吹奏楽祭が昨日無事終わり、今日は休みとなっている。
私たち3年生に残された本番は、7月下旬にある夏祭りでの演奏と、コンクールだけとなった。
ファイルをパラパラとめくっていくと、「じんじん」の楽譜が入っている場所の隣に入っている、写真の束が目に留まる。
私は音楽プレイヤーを取り出し、「じんじん」を流しながら、その写真を一枚一枚眺める。
この中のほとんどは、修学旅行で撮った、沖縄の風景の写真だ。
“沖縄で見てきたこと、感じてきたこと。それを演奏でも表現できるように。そのために、いつでもそれを思い出せるようにしておくように”
────修学旅行から帰ってきて、寺沢先生にそう言われてから、私はこうやって楽譜ファイルに写真を入れておいて、時々こうして写真を眺めては、沖縄の風景を思い出す。
青い海と空、真っ白な砂浜と雲、色鮮やかな花、照り付ける太陽、沖縄の伝統的な造りの家、シーサー、エイサーを踊る人々………
ひとつひとつの音とその風景の色彩とを重ね合わせながら、この音のこんな吹き方を真似しなきゃ、とか、この部分はもっとこうした方がいいかな、などと思いながら、じっくりと曲を聴く。