あの夏の続きを、今
それから昼前まで少し宿題を進めてから、昼ごはんを食べて、予定の時間より少しだけ早めに家を出る。
もうすぐだ。もうすぐで、松本先輩に会える。
澄んだ青い空を見上げて、「マーチ・スカイブルー・ドリーム」のメロディーを口ずさみながら、歩いて駅へと向かう。
駅に着いてしばらくすると、カリンもやって来た。
「お待たせ〜!行こっ!」
私はカリンと電車に乗り、S駅へと向かう。
電車がS駅に着くと、私たちの他にも、たくさんの人が降りていく。
みんな、同じ改札を抜けて、私たちと同じ方向へと向かっていく。きっと、演奏会を見に行く人達だろう。
爽やかな青空と日差しの下、私とカリンは並んで、大通りの歩道をまっすぐに歩いていく。
一歩ずつ前へ進んでいく度に、ワンピースの裾がふわふわと揺れて、私の胸はドキドキと高鳴り出す。
会場に、少しずつ近づいていっている。
松本先輩のいる場所に、近づいていっている。
そう考えるだけで、心の中に期待が満ち溢れてくる。
道を曲がり、川沿いを進みながら、私はずっと松本先輩のことを考えていた。
先輩は私のことをどう思っているのだろうか。
先輩は私の気持ちに気づいているのだろうか。
もし、私が想いを伝えたら、どうなるだろうか────
────ふいに、頭の中に、以前の浜百合高校の定演で一瞬だけ見たあの光景を思い出す。
────いいや。あれはきっと幻覚だ。
無理やりにでもそう思い込むことで、不安を押し込んで、ほんの少しの希望も失わないようにする。