あの夏の続きを、今




やがて、全てのプログラムが終わると、客席にいた人たちが次から次へとホールの出口に押し寄せる。


「行こっか、カリン」

「うん」


私とカリンも、客席を後にしてロビーへと出る。


「志帆、次の電車の時間わかるー?」

「えー、覚えてないよー」


私とカリンがロビーに留まったままそんな会話をしていると、舞台裏に続いているのであろう「関係者以外立入禁止」と書かれた扉の向こうから、黒いジャケットのユニフォームを着た人たちが、ぞろぞろとロビーにやって来た。


皆、それぞれの楽器を手に持っている。



「────あっ」

「?…どうしたの志帆……あ、あの人たち、出演者だよね!松本先輩いるかな?見てみようよっ!」


出てきたのは、確かに先ほどまでステージに立っていた高校生たちだ。


────きっと、この中に松本先輩もいるはず。そう思い、私は次から次へと扉の向こうから出てくる黒いジャケットの人達の顔を確認する。


やがて、眼鏡をかけていて、背の高い、ユーフォを持った男子────松本先輩が現れた。


「ほら、志帆、松本先輩だよーっ!行ってきなよー!」

「うわ、ちょっとカリンっ!」


カリンに背中を押された勢いで2、3歩前に飛び出してしまった私は、そのまま松本先輩のいる方向へと向かっていく。


────声をかけなきゃ!


「あ、あの、松本先輩……」


先輩の近くに寄り、恐る恐る声をかける。


すると松本先輩は、軽く会釈をしながら「あっ、こんにちは!」とだけ言って、そのまま他の人たちの後に続いて去っていってしまった。


────えっ………


────たったこれだけ…………?



予想だにしていなかったそっけない態度に、私はしばらく呆気にとられたまま立ち尽くしていた。
< 367 / 467 >

この作品をシェア

pagetop