あの夏の続きを、今
松本先輩を含めた高校生たちは、楽屋かどこかに続いているであろう反対側の扉の向こうへと消えていく。
しばらくすると、楽器を置いてまた戻ってきた人達が、次々に元の方向へと戻っていく────これからステージの片付けでもするのだろう。
松本先輩もすぐに楽器を置いて戻ってきた。
すると、舞台裏に続いているであろう扉の方から女子部員が顔を出し、「松本くーん、ピアノ運ぶから男子集まってこいって先生が言ってる。急いで〜」と松本先輩に向かって手招きしながら言う。
松本先輩は「うん、すぐ行くー」と言いながらそちらに向かって走っていった。
────その光景に、妙な寂しさを覚える。
私はふと、右手に持ったままのパンフレットに視線を移した。
裏表紙に、演奏者名簿がある。
60人を超える部員数。その中で、私の知っている人は、松本先輩とシオリ先輩、そして今年うちの中学から進学した先輩が2人いるだけだ。
後は全て、私の知らない人ばかり。
────やっぱり、当たり前だけど、先輩は私なんかよりもずっと、私以外の人と長い時間を過ごしているんだ。
きっと、中学よりもずっと楽しく、充実した時間を。