あの夏の続きを、今


もしかすると、先輩の中での中学時代の記憶は、だんだんと薄れつつあるのかもしれない。


そんな考えが頭の中を巡る。


先輩にとって、心の中の私という存在は、とっくに小さくなっているのかもしれない。


きっと、豆粒ぐらいに。


……いや、豆粒ぐらいの大きさでも、確かな実態を持ってそこに存在していれば、まだましな方なのかもしれない。


私はずっと、私が「中学時代の後輩」であるという不変の事実がある以上、たとえその存在の重さがどうであろうと、必ず先輩の心の中のどこかに私という存在がいるものだと思っていた。


けれど、その信念は今、大きく揺らいでいる。


私だって、好きでもなんでもない、小学校時代とか中1の頃とかのクラスメートのことを考えることなんて、今はもう全くと言っていいほどないんだし。


だから、先輩の中の「後輩」としての私も、時が経つにつれて、新しく積み重なっていく記憶の中に埋もれて、消えていってしまうのかもしれない。


高校という世界の記憶の中に。


私とは違う世界の記憶の中に。


私のいない世界の記憶の中に。


中学よりもずっと充実していて楽しいであろう世界の中に。


だとしたら────


だとしたら────────



絶望的な思いだけが、ぐるぐると渦巻く。
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