あの夏の続きを、今
私は空を見上げながら、今も一生懸命コンクールの練習、ソロの練習に励んでいるであろう松本先輩のことを想った。
松本先輩への恋が実ることはきっとないだろう────あの定期演奏会の日以来、私はそう思うことしかできなくなってしまった。
それでも私は、今更先輩への想いを諦めることなどできなかった。
やはり、結果がどうであろうと、この想いを伝えずに終わることなどできないのだ。
想いを伝えてしまえば、きっともうそこで全てが終わってしまう。先輩と会うことも、もうできなくなってしまう。それだけが気がかりなんだけど。
それでも────私は一歩踏み出さなければいけないのだ。
大人にならなければいけないのだ。
長い人生の中で出会う全ての人が、一生私の側に、いつでも会える所にいるわけじゃないんだから。
時には「永遠の別れ」だって、あるはずなんだから。
────実際、私と同じ小学校に通っていた同級生の中で、中学受験でもしたのだろう、この学校には通っておらず、しかもどこの中学に通っているのかという情報も入ってくることなく、全く会えない、連絡も取れない、消息も分からない、という人は何人もいる。
それに、中学校に入ってもずっと一緒だと思っていたレナとハルトも、今や深い溝で隔てられ、話すことさえなくなってしまった。
今まで私は、たくさんの人と出会ってきた。
けれど、その分、会わなくなった人もたくさんいる。
松本先輩も、いずれはそんな人たちの中の一人になる運命なんだろう。そう思うことにしている。
だから、そのような「永遠の別れ」を受け入れられるぐらい、大人にならないといけないのだ。
────もうすぐ、私は15歳なんだから。