あの夏の続きを、今
「志帆先輩、ちょっといいですか」
エリカちゃんに横から声をかけられ、私ははっと我に返った。
「どうしたの、エリカちゃん」
「あの、私昨日の合奏の時休んでたので、そのとき先生に言われたこと教えてもらえますか?」
「うん、いいよー。楽譜と筆記用具を持ってきて。色々とあるから」
「はいっ」
エリカちゃんはすぐに自分の楽譜とシャーペンを持って私の所にやってきた。
「えーとまず、何回も言われてることだけど、イントロと練習番号Dの前はとにかく勢い重視。あと、Trioの所は各セクション1人ずつでいいって言われたから、ここは私が吹くね。それから……」
私が話している間、エリカちゃんは真剣な眼差しで私の目を見ながら聞いていた。
「昨日言われたのは、ざっとこれぐらいかな」
「ありがとうございます!…あ、あとそれから……」
「ん?どうしたの?」
「ここのメロディーの所って、やっぱり途中で息吸わない方がいいですか……?」
「うん、吸わない方がいいだろうね。余韻を響かせないといけないから」
「そうですか……私、なかなかここ息が続かないんですよね」
「とりあえず、途切れずに吹けるように練習してみて、どうしても息が続かないなら、私とエリカちゃんでブレスの位置をずらそう。もし、どうしてもひと息で吹くのが無理そう、って思ったら、早めに教えてね」
「わかりました!ありがとうございます!」
エリカちゃんはそう大きな声で言うと、自分の練習場所に戻っていった。