あの夏の続きを、今


合奏開始時間の10時が近づくと、部員たちは音楽室に集まってきて、音出しをしながら寺沢先生が来るのを待つ。


寺沢先生は10時ぴったりにやって来て、いつものように挨拶をした後、基礎合奏を始めた。


寺沢先生が転勤してきたばかりの頃は注意されっぱなしで1時間ほどかかっていた基礎合奏も、今となってはピッチのずれを少し指摘される程度になり、すぐに終わるようになった。


そして、課題曲の合奏に入る。


「じゃあ、最初からいくぞー」


そう言って先生は指揮棒を構え、部員たちも楽器を構える。



────タカタッタカタッタカタッタッ、パーンパパッパッパーーーン!


音楽室に響く、最初のファンファーレ。


私はカリンとアズサちゃんの吹く1stの音をしっかりと聴きながら、出しゃばらず、けれど弱くなりすぎないように、2ndの音を吹く。


春に比べたらずいぶん改善したとはいえ、それでもまだ物足りなさは残る。そんな音だ。
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