あの夏の続きを、今


やがて、練習番号Dの前の、トランペットが目立つ部分まで演奏したところで、先生が指揮棒を止めた。


「やめっ。……そこの、タッタカタッタッターンってとこ、トランペットの1、2番とユーフォでもう一回」

『はいっ』


私たちはもう一度楽器を構え、その部分を吹く。


この部分はトランペットの1st、2ndとユーフォだけが目立つ音を吹いている、とても重要な部分だ。


「勢いが足りないって、何度も言わせるな。そこは曲中で唯一アクセントが付いてる所だろ?だから思いっきり目立たせないといけないんだよ。…もう一回。さん、しっ」


────タッタカタッタッターン!


「うーーーん……」


寺沢先生は少しの間難しい顔をして考え込んでいたが、すぐにこう言った。


「じゃあ……27小節目の前からこの部分だけ、上原は2番を吹いて、広野は1番を吹きなさい」

「「はいっ」」

「じゃあ、それでもう一度。さん、しっ」


────タッタカタッタッターン!


先生は満足そうに頷くと、「じゃあ、これからはそれで行こう。────じゃあ、もう一度最初から」と言って、演奏を再開した。
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