あの夏の続きを、今


その後の自由曲の合奏は特に何事もなく、いつものように進んでいった。


「じゃあ、今日の練習はここまで」


先生がそう言うと、いつものように部員全員が起立して、部長の合図で終わりの挨拶をする。


「ありがとうございました!」

『ありがとうございました!』


礼をしてから、楽器を片付けようとしたその時、寺沢先生が言った。


「広野、山内、ちょっと来てくれないか」


……何の話だろう?


他の部員たちがガヤガヤと話しながら楽器を片付けたりクールダウンをしていたりする中、私とカリンは、言われるがまま先生のもとに集まった。


これから何が始まるんだろう、という私たち2人の不安とは対照的に、寺沢先生の表情は落ち着いていた。


「今更こんなこと言うのも申し訳ないんだけどな……」


そう言うと先生はカリンの方を見て、次に私の方に視線の向きを変えた。


「広野、今日から君は山内の代わりに課題曲の、ソロを吹きなさい。問題がなければそのまま本番でも吹いてもらう」

「…………えっ」


私が……あのソロを!?


驚きのあまり素直に返事をすることもできず、固まってしまう。
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