あの夏の続きを、今
私とカリンはそれぞれの席に戻ってきてから、楽器を片付ける。
「あーーー、カリン、すっごい安心したよーーー……やっとこれでソロのプレッシャーから解放されるぅーーーー」
カリンは私の隣で譜面台を畳みながらそう言った。
「良かったね、カリン。今まで大変だったでしょ。……ごめんね、嫌なのに押し付けたりして」
「いいよいいよ、本当はカリンがちゃんとできるようになってなきゃだめなことだもん……志帆、ソロできそう?」
「少し不安だけど……でも、やれって言われたからには、私、頑張るよ」
「カリン、応援する!志帆ならやれるって、信じてるよ!」
「うん!ありがとう!」
カリンはトランペットをケースにしまうと、小物や譜面台を入れたトートバッグと一緒に準備室へ持っていく。
私も自分の楽器をケースにしまい、蓋を閉じる。ケースの取っ手には、うさぎのキャラクターのぬいぐるみ────去年の引退式でアカリ先輩からもらったもの────を付けている。
私はそのケースにショルダーストラップを付けて背負い、楽譜をナップサックにしまう。
「あれ?志帆、楽器持って帰るの?テスト週間はまだ先だよ?」
楽器を片づけ終えて戻ってきたカリンが、私に話しかける。
「うん、これからちょっと近所の運動公園で練習しようと思ってね。…あっそうだカリン、1stの楽譜ちょうだい」
「わー、志帆、すごい!さすが努力家だねっ!でも、あんまり無理しちゃだめだよ?寺沢先生も、今日はゆっくり休んでって言ってたしね」
カリンはそう言いながら「マーチ・スカイブルー・ドリーム」の1stの楽譜を差し出す。
「大丈夫大丈夫!じゃあ、また明日ねー」
「うん!バイバイ!」
私は楽譜を受け取って、カリンに手を振ってから、いつものように「ありがとうございました」と言って音楽室を出る。