あの夏の続きを、今


いつもの帰り道を、自転車をのんびり漕いで進んでいく。


穏やかな青い空を眺めながら、「マーチ・スカイブルー・ドリーム」のメロディーを口ずさむ。


今日の空は、いつもに増して明るく澄んでいて穏やかだ。


────この穏やかで澄んでいて、優しい感じ……


なんだかまるで、松本先輩に似ているな────


そんなことを思いながら、いつも曲がる交差点を今日は曲がらずにまっすぐ進んでいく。


そのまま少し進んだ所に、運動公園がある。


ここなら広いし、近くに家があまりないし、楽器の練習にはもってこいだ。


入口近くに自転車を止めてから、楽器と荷物を持って、学校の運動場の数倍くらいある広い公園に入っていく。


公園の一角にあるバスケットゴールの下で、小学校高学年ぐらいの子どもたちがバスケットボールをして遊んでいるのが、ふと視界に入る。


ダン、ダン、とボールをドリブルする音。


────その音が引き金となって、ふいに私の脳裏に、レナのことが蘇る。





────“裏切り者は、もう二度と…………”





私は頭をぶんぶんっと振って、今も消し去ることのできない私の後悔の象徴を振り払う。


今も時々レナのことを思い出しては、強い自責の念に駆られる。


私はなんてひどい人間なんだろう、なんて役立たずな人間なんだろう、私にはきっと存在の価値はないのだ────そんな思いに苦しめられる。


けれど、今の私には────


任された役目がある。


私でなければできない、大切な役目がある。


ソロという、大切な役目がある。
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