あの夏の続きを、今


私は公園の一角の、芝生の上の屋根付きのベンチに腰を下ろした。


荷物を下ろして、うさぎのストラップの付いた楽器ケースの蓋を開ける。


────そういえば、アカリ先輩は今はどうしているだろうか。


噂によれば、県内では浜百合高校と並んで有名な吹奏楽の強豪校で、今もトランペットを続けているらしいのだが。


軽くチューニングをしてから、私は先ほどカリンに貰った楽譜を広げる。


右下に見える「solo」の文字。


私に託された役割の証だ。


早速、楽器を構えて吹いてみる。



────ラーラーラーーラー、たったったったーん、パパパーン!



一気に駆け上がっていく最後の3つの音が、昼下がりの空へと吸い込まれていく。


この最後の3つの音が、かなり難しい。


勢いを出そうとすれば音が裏返ってしまうし、正確な音程で出そうと思うと今度は音が弱くなってしまう。


私は納得のいく音が出るまで何度も何度もソロを吹いた。


何十回も吹いてみたけれど、まだ完璧には程遠い。


また、明日から練習だな────


そう思いながら楽器と楽譜を片付け、私は公園を後にした。
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