あの夏の続きを、今
パートメンバー全員が揃うのを待つ間、私はソロの練習をする。
────ラーラーラーーラー、たったったったーん、パパパーン!!
以前と比べたらだいぶ良い音になったと思う。
勢いを付けるのが難しい最後の3つの音も、自分の理想に近い音が出せるようになってきた。
ソロを任されて以来、休日とテスト週間には必ず、あの運動公園に行ってはトランペットの練習をしていた。
その練習の甲斐があってか、カリンほどではないけれど、だいぶ音が出やすくなった気がする。
やがて、パートメンバー全員が私とカリンのもとに集まってきた。
「じゃあ、パート練始める?」とカリンが言うので、「うん!」と頷く。
「じゃあ、志帆、いつものジャンケンいくよー」
「おっけー!」
────パート練習を私とカリンのどちらが中心になって進めるかは、毎回、私とカリンでジャンケンをして決めている。
勝った方が進めていく、ということになっている。
「じゃあ、いくよーー!」
「「最初はグー、じゃんけん、ポンっ!」」
「志帆の勝ち!じゃあ志帆、今日はお願いねー」
「了解っ!じゃあ、みんな、円になってー」
私の指示で、楽器と譜面台を持った後輩たちが円になって並ぶ。
真剣な眼差しで私を見据えている後輩たちの顔を、私は順番に見ていく。
アズサちゃん、エリカちゃん、ユイちゃん、モモちゃん。
かつて、後輩である私に、そして演奏そのものにいつも真摯に向き合っていた松本先輩に憧れていたように……
────今は私がその立場になる番だ。
私はもう一度みんなの顔を見回して、言った。
「じゃあ、チューニングから始めます」
「「「「「はいっ」」」」」