あの夏の続きを、今
毎日のようにコンクールの練習が続いているため、合奏が終わる頃には既に私の唇はヒリヒリと痛んでいる。
練習が終わると、楽器を片付けながら、唇をプルプルと震わせてほぐす。
────まだ、これからやるべきことがあるからだ。
私はナップサックに荷物をまとめると、トランペットケースと一緒に肩にかけて部室を出る。
「あれっ、志帆、今日ももしかして運動公園で練習?」
そう話しかけてきたのはカリンだ。
「うん、そうだよー」
「志帆って、休みの日はほとんど毎日楽器持って帰って練習してるよね。疲れないの?」
「うん、大丈夫だよ。まあ、唇は痛いけど、でも、こうやって音出せてるわけだし」
「そっか。あんまり無理しちゃだめだよー」
「うん、じゃあねー!………ありがとうございました!」
私はいつものように挨拶をしてから音楽室を出ると、そのまま別棟を後にして、自転車に乗って校門を出る。
ぎらぎらと照りつける日差しの下で、自転車を漕いでいつもの運動公園へと向かう。
学校での練習だけで1stやソロをこなすのはやっぱり不安だから、どんなに暑くても疲れてても、ついこうやって部活外の時間にも練習したくなってしまう。
運動公園に着くと、いつもの屋根付きのベンチのところで音出しをする。
大丈夫。努力すればその分だけ、結果がついてくるはずだから────
そう自分に言い聞かせながら、チューニングをして、『マーチ・スカイブルー・ドリーム』の最初の部分を吹き始める。