あの夏の続きを、今


『音で絵を描く』────それを意識しながら、一つ一つの音を空へと放つ。


いつも私のそばに広がっている、青い青い空。


そこに浮かぶ白い雲、眩しい太陽。


優しく澄んだその姿は、どこか、松本先輩にも似ていて────


そんな光景を、演奏から想像できるようにするためにはどうすべきか。


私のパートの音は、何を表しているのか。


Trio────マーチの中間部に入る。トランペットは長い休みとなっている部分だ。


電子メトロノームの画面の揺れる針をぼんやり見ながら、私は中学生になったばかりの頃のことを思い返す。


初めて聴いた松本先輩のトランペットの音。今はもう記憶もだいぶ薄れてしまっているが、あの時感じた太陽のような華やかさ、心に残る温かさは、今もじんわりと心に残っている。


私も、そうならなくちゃいけないんだ。


そう思いながら息を大きく吸って、曲の終盤の部分を吹く。


そして、ソロ────



────ラーラーラーーラー、たったったったーん、パパ………
「よっ、志帆!」
────ブァッ!!!
「うわああああっ!!!!!!」


いきなり何者かに背中から声をかけられ、驚いた私は盛大に音を裏返らせてしまった。


「ちょ、何……………あっ」


振り返ると、そこにいたのは────


「なんだ、セイジかー!もう、びっくりさせないでよ!これからいい所だったのにー」

「悪い悪い、帰ってたらこっちの方からトランペットの音が聞こえるから、ちょっとからかってやろうかと思って」


そう言ってにやにや笑うセイジに向かって、私は、ひどーい、といつものように言葉をかけた。
< 395 / 467 >

この作品をシェア

pagetop